2021.06.14
若き日は過ぎ去り易い
本校卒業生である作家の田辺聖子さんの18歳当時の日記が発見され、その事について雑誌「文藝春秋」に掲載されました。本校としても、大変誇りとするのものです。A4判ノートに書かれた日記は、兵庫県の伊丹市の自宅を整理するなか発見されました。その表紙には、「18歳の日の記録 昭和20年4月より 若き日は過ぎ去り易いけれども多彩であり、豊かな収穫がある。それ故に、若き日は尊い」と万年筆で書かれていたそうです。
田辺聖子さんは、1940年(昭和15年)に淀之水女学校(現昇陽中学校・高等学校)に入学され、4年で繰上げ卒業後に樟蔭女子専門学校国文科へ入られました。この日記は、1945年4月1日から始められ、戦局がなお一層厳しくなる中、瑞々しい感性と鋭い洞察力で書き続けられました。特に、自宅が全焼した大阪大空襲の場面では、自宅のある福島、出入橋、堂島、鶴橋などの地名が記載されており、田辺聖子さんの見た風景が、今も想像されます。18歳にして田辺聖子さんの小説家としての資質を大いに感じ取ることができます。
田辺聖子さんも言っていますように、若き日は過ぎ去り易いものです。同時に、若き日は、その後の人生に多大な影響を与える大切な時代です。本校も、そのような若き生命力とまっすぐに向き合っていきたいと思いました。
本校正門付近には、田辺聖子さんの石碑が立っています。そこには、「好きな友達がたくさんできて、私は今日もあの子に会えると思うと登校するのが楽しくてたまらなかった記憶があります。それだけで「学校」というものは存在価値があるのです。(淀川少女より)」と刻まれています。田辺聖子さんの日記も含め、日常生活の喜びや「学校」の意味について、考えさせられます。